ロサンゼルスの二宮尊徳像(米国の開発)

 

 

ロサンゼルス(以後LAと記述する)に二宮尊徳(注1)の銅像があるのをご存知でしょうか? 日本人街のSan pedoro と Second streetの角、 Manufacturers Bankの前にこの像があります。LAのダウンタウンでは開発コストの1.25%以上を芸術作品に使うことを義務付けられています。そのアートとして寄付されたものですが、ま、どこの小学校にもこの銅像があった世代の私にとっては、「う~ん。確かにアートといえばアートなんだけどな」といった感じです。でも、一定以上のお金をアートに使えという法律は街にアクセントをつけ街の価値を高めるのに役立っています。

  

他にもダウンタウンの市立図書館前に開発された550ホープ・ビル(通常ホープ通り550番地といった呼び名になります)には、ビルの脇に月か太陽を象徴するものと滝のようなモチーフがあります。さらにホープストリートが図書館前で行き止まりとなっているため、カルデサック(注2)と呼ばれる円状になったところで、くるっと廻って戻れるようになっている部分があります。この大きな円には鋲で作った模様が埋められていて、図書館の屋根にある模様と対になっているそうである。(右下の拡大写真でよ~く見ていただくと鋲で作られた模様が微かにわかります)さらに当時始まりもしていませんでしたが、その先のホープストリートと6番通りの交差点にも何らか類似のシンボルが埋められることになっていると聞いています。つまり、下図の青丸の位置に相互に関連したシンボルが一直線に並ぶことになるわけです。何となくダビンチ・コードを思い出すような話です。

   

 ついでに言えば、不動産の価値を決めるのは、その不動産そのものだけでなく周りの環境や街並みと一体化して評価されるものという認識が徹底していて地域で高めようとする努力が見られるように思います。私が関わっていたミラロマ地区(近くにトヨタの部品倉庫があり、主に流通倉庫と簡易な加工を行う工場が立ち並んでいる)の工業団地の開発ではCC&R’s(=Conditions Covenants and Restrictions)と呼ばれる開発協定を届けてあり、開発者は土地を区画で切り売りしていくわけですが、この開発地に建てられる建物のグレードは一定以上の規格でなければならないことがこの協定で法的に制限されているので、後からの購入者が勝手に安物を建てて全体の工業団地の価値を下げてしまうことがないようになっていました。例えば、屋上の空調機などは必ず目隠しをつけて見えないようにしなければならないし、壁材は開発地のグレード低下を招く金属パネルの使用は禁じられていた等々です。(注3)要は開発者が通常の法律規制が求める以上のグレードを開発地にあてはめようと思えば、それを盛り込んだCC&R’sという協定を登録し法的強制力を生まれさせるという制度です。

 

住宅地にも街並みとして価値を高めようという意識は高く、突出した色調の建物の建設は憚られるし、植栽をきちんと保つことが求められる。また、私が関わったシアトル市近郊の開発では、森林のまま保存されたエリアの大きさが写真のようで驚くばかりです。(全体の開発の様子がわかる写真がないので、パースを右に入れました。私が関わっていたのは開発第一期のオフィス部分で左の写真なのですが、これが、パースの右下部分に相当します。)これほど豊富な森なのに、オフィスでは駐車場面積を制限して森林をキープするため地下駐車場まで用意されています。オフィスと住宅が混合した開発なのですが、まさしく“森に抱かれた”という言葉そのままの環境です。

 我があすみが丘も、良く整った道路、街路樹、各家の植栽も含めた街並みが美しい。一部にドギツイ色彩を使った勝手な建造物が街全体の調和を乱しているのは残念である。十分な植栽を施すことも重要だし、十分な手入れも必要である。(こう書いたものの手入れについては私自身も耳が痛い)更に、この街の良さはあたりの環境までも一緒になったものである。昭和の森、水辺の里公園、東急セブンハンドレッド、広がる田園と里山という風景、それらと一体となったものがこの街の価値なのである。2004年暮れに始まった小山町最終処分場騒動は記憶にまだ留められているのではないでしょうか? あれが作られていたらどうなったでしょう。一つ作られてしまえば、我々自身も慣れっこになって次々と作られてしまうのではないでしょうか? 不動産価値は自分のものだけでなく街全体の美しさ・調和で決まります。街の価値は周辺も含む全体で決まります。皆さん協力してこの街この環境を守っていきましょう。それに、こんなアメリカ流の不動産価値云々より、その方が気持ちいいじゃありませんか。

 なお、小山町の最終処分場計画は20038月の競売で“板倉・大椎土地改良区”が買い取ることができてストップしました。産業廃棄物が入れられはしませんでしたが、森は切り倒され、土は削り取られ大穴があいた状態でした。(上の写真の中央)今も“緑の環”と“森を守り育てる会”が植林と手入れ活動を続けていますので関心のある方はご協力ください。(http://www.g-cycle.org/

 

 

注1 若い人の中には「二宮尊徳って誰?」という方もいるかもしれませんのでウィキペディアのURLを付け加えます。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%AE%AE%E5%B0%8A%E5%BE%B3

注2 Culdesac・・・・・・・・ ロータリーとの違いは、一本道の行き止まりがロータリー状になった道というべきか

注3 ただ、外壁がコンクリートと金属とどっちが高級感があるかという感覚は、アメリカの東部・西部で違っていて、大雑把にいうとアメリカの東部側ではむしろ金属パネルの壁の方が高級だとみなされる傾向があり、東西で逆であるとも聞いた。