馬には乗ってみよ 人には添うてみよ

 

あすみが丘4丁目 武山高之

 

「馬は乗ってみないとどんな動物か判らない。人も世帯を持って初めて、その人の長所に気付く」ということで、お見合いの世話をするおばさんがよく使った言葉らしい。外国人との付き合いも、親しく話してみると思わぬ発見をする。私はよく行きずりの外国人と話す。その体験を2つ。

 

トルコの案内人

Cosmosトルコの旅」の日本語ガイド・イルケル君は、イスタンブールに住む若者で親戚のエディと観光ガイドをしている。東京で日本語を勉強し、いまはトルコで日本語ガイドをしている。しかし、彼の日本語は、学生コトバで、どこかおかしい。女性中心のグループの人たちに向って、「さあ、みなさんメシを食いに行きましょう」と言う。

 観光の途中、よく二人は私に政治問題を持ちかけてきた。イルケルは英語が判らない。エディは簡単な日本語しか判らない。私はトルコ語が判らない。日本語・トルコ語・英語のややこしい会話。

 クルド・EU/NATO・インフレ・宗教・対米感情などの問題について語った。そこには国を思う熱い真剣さがあった。エディは兵役の義務として、クルド地域に出兵し、友人が戦死した話をした。彼は、反米的であり、クルドもイラクも好きではなかった。一方、親日的であった。

 田舎に行くと貧しい村があり、観光バスの回りに子供たちが集まってきた。心無い観光客がお金を与えようとすると、イルケルは毅然とした態度で、「お金を与えないで下さい」と言った。自国の子どもたちが施しを受けるのが、耐えられなかったのだろう。子どもたちを思う暖かい心を感じた。

また、会いたい人たちである。

 

パプア・ニューギニアからの留学生

 ふるさとの高知でのこと。いい香りがしてきたので、〔珈琲屋〕に入った。そこに肌の色の浅黒い小柄な青年が一人ぽつんと座っていた。「何処の国から来た?」と聞くと、「パプア・ニューギニアから」と答えた。「ポートモレスビーの近くか?」と聞くと、「近くではないが、ポートモレスビーは首都だ」と答えて、首都を知っていてくれたのが嬉しそうだった。

 高知大学の修士課程でコメの作り方を勉強している。今はタロイモ栽培が多いが、コメもやってみたい。彼の国には言葉は30くらいあり、彼にもわからない言葉がたくさんある。そのため、公用語は英語。第二次世界大戦では、そこで日本軍が戦ったこと。そんなことを1時間以上話していた。ウナギも食べるが、ぶつ切りにして食べる。高知の蒲焼のほうが美味いなど、話は広がった。

 最後に、「日本は好きか? 高知は好きか?」と聞くと、「日本も高知も大好きだ」と言う。“ヨサコイ鳴子踊り”もやりたい。「何よりも、アナタのようにフレンドリーな人がいるのが嬉しい」と言った。

 最後に、店のオヤジさんに頼んで挽いてもらっていたパプア・ニューギニアのコーヒーをご馳走してくれた。挽き賃はオヤジさんの驕り。小さな店には客は私たち2人だけ。

 もし、私が彼に話しかけなかったら、私は彼に親近感を持たなかっただろう。この短い出会いは、彼の日本に対する印象にもプラスしたことも間違いない。